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KADADO
Aqupuncture
腧穴・ゆけつの近代研究(ツボの科学的作用)
中国語翻訳 今村神鍼
3・2・1 穴位(けつい・ツボ)の形状と構造。
中国建国以来、中国の穴位の形状と構造に対する研究は、主に解剖と組織学の分野においてその重点を十四経の観察を主眼として行われてきた。
上海第一医学院は324個の経穴に死体解剖による分析と観察を加え、神経と関係のあるものは323個(全体の99.6%)であるという結果を得た。その中で浅層の皮神経と関係のあるものは304穴(全体の99.6%)でしかもそれと深部の神経と関係のあるものは170穴(全体の52.8%)、同一穴位で浅層の皮神経と深部神経の両者に対して関係のあるものは149穴(全体の45.9%)に到った。上海中医学院の穴位の解剖の関係資料によると、全身の十二経脉の309穴に対し行ったものは穴位を深刺する点がちょうど神経に当たるものが157穴(50.8%)となっている。その他ではある研究機関や個人もその種の調査を行っている。例えば大連医学院が308個の経穴を解剖した結果はり治療によって神経或いは横0.9cm以内だったものは214穴(全体の69.1%)に見られた。南京第一医学院が114個の経穴を解剖した結果、上肢の穴位で神経と関係のあったものは97.96%、下肢の穴位で神経の関係があったものは95.39%であった。
陳俊兪氏等が66の穴位を解剖した結果、はり治療点が神経に近かったものは54穴(81.8%を占める。)であることを発見した。また石中梁氏が全身の経穴361穴を解剖した報告によると、神経と関係のあるものが205穴(56.8%を占める。)という結果を得た。以上の資料から明らかなように穴位とその周囲神経には密接な関係があるといえる。人体で穴位でない部位の神経枝は穴位である部位よりも少なくなっている。ある報告によれば8体の成人の死体の16側について交感神経幹、交通枝と膀胱経背部の一行線の腧穴の関係について観察を行った結果、交感神経幹と交通枝の体表投影線と膀胱経の背部一行線との附合率は80%であった。その中でも164個の交感神経幹及び184個の交通枝の体表投影点と膀胱経一行線の腧穴との附合した確率は66%であった。これ等は膀胱経背部一行線の腧穴と交感神経幹及び交通枝の関係が非常に密接であることを物語っているといえる。上海中医学院の解剖学的資料ではさらに穴位は神経と密接な関係を持っている以外に血管とも比較的密接な関係があることを明らかにしている。
309個の経穴を針刺し、はり治療点の傍ら0.5cmに動静脈が存在したものは262穴(84.36%を占める。)で、直接動脈に当たるものは24穴(7.26%を占める。)石中梁の報告した資料によると、針刺した361穴の中で針刺点が大きな動脈に近かったものは58穴(16.1%)、静脈に近かったものは87穴(24.7%を占める)であった。
その他の資料によると361穴を針刺して、その針刺点が動脈に近かったものが58穴(16.1%)、浅層の静脈に近かったものは87穴(24.7%)であった。 その他の報告によると8体の死体を経絡の循行に沿って解剖した結果、7つの経絡の295の主要な穴位について断層解剖と象限解剖をした結果、この7経の主要な穴位とその循行路線は神経と関係が密接であった。さらにその穴位の血管及び血管周囲の自律神経が関係することを明らかにした。近年、更にある報告によると穴位とリンパ管の関係について研究を行ったものがあった。これは穴位を電気誘導法でモニターし、併せて穴位を脈管のX線と顕微鏡を用いて観察したもので、缺盆、雲門、極泉、衝門、維道、気衝、急脉、承扶、秩辺、等の穴位のすべてと、これ等それぞれにリンパの部位が一致することを発見した。
まとめると、以上の研究を通じて穴位の形状と構造と神経の関係がもっとも密接であり、動静脈がその次で、リンパがそれに続く事が明らかとなった。
穴位の組織学的研究の分野においては、ほとんどがその形態と機能の二つの面からの研究を採用して行われた。あるものは電気生理的に神経繊維の反応を見る方法を用い、合谷、内関、足三里等の比較的筋肉層の厚い穴位に観察を行った。これは穴位の部位に筋紡錘の数値に着眼して、針刺し鍼感を起こすと同時に穴位の筋電図(65~80%)で計測したものである。その結果大体において上述した筋紡錘の占める割合の数値に正比例を示した。
組織化学的方法でも穴位の部位に筋紡錘が密集していることが明らかにされている。ある研究によると人の内関穴の針感の受容器は方形回内筋の内部の筋紡錘レセプターであることが確認されている。またあるものは太陽穴の側頭筋と頬車穴の咬筋上にもすべて筋紡錘の存在があることを確認している。これ等により、筋紡錘は筋肉が比較的厚い穴位の主なハリのひびき感の受容器であると考えられる。これは筋紡錘の構造がかなり複雑で神経に供給される量がとても豊富である為だといえる。筋肉が比較的厚い部位の穴位にはすべて筋紡錘が存在するとはいえ、唯一つのハリのひびき感の受容器ではないといえる。例えば7例の三陰交穴に刺針した実験では唯一例には筋紡錘の存在を確認したが、しかしこの7例すべてにひびき感があった。その上1例のハリのひびき感は拇指にまで至ったのだが、この例には筋紡錘の存在は認められなかった。ある実験では猫の鎮痛効果を一つの指標として組織的な観点から太陽、頬車穴下の筋肉の受容器を観察した結果、5つの穴位中ただ一つの穴位で筋紡錘が見られたにすぎなかった。更に遊離神経終末が比較的多く、分布が広範囲で、大小不均等な血管及びその周囲の自律神経繊維が多く見られたと指摘している。またある観察では水溝穴の部位には豊富な遊離神経終末、毛包受容器、及び典型的なクラウゼ小体が見られた。また齦交穴の部位では遊離神経終末、毛包受容器、が見られた以外に触覚小体、ラメラ小体とクラウゼ小体等が見られた。これ等により針感と針刺効果の主な受容器は筋紡錘と遊離神経終末であるといえる。それ以外にある者はハリのひびき感点を対象に穴位の組織構造を研究した。穴位に青色でマークする方法を用いて足三里等の35の穴位を研究をしたもので、それでは青色マークのすべてが深部組織に分布しているのが確認された。(これはその後多くの似たような実験で実証されている。)青色マークを中心として、直径1.5㎜の視野以内に神経結束が見られたものが4回、血管のものは26回、これにより血管と針感の発生の間に一定の関係があることが認められた。続いて又あるものは青色でマークする方法を改良したものと消毒済み墨汁を注射する方法と置鍼等、三種の針感マーク法を用いて合谷、内関、湧く泉、三陰交等23個の穴位を観察した。針刺部位の周囲1.5㎜の範囲内で23回中すべてに小さな神経と遊離終末と小血管及びその血管壁上の神経が見られた。また筋肉が見られたものは15回、筋紡錘が見られたものが7回、その他にラメラ小体と神経等である。これ等を組織の構造と針感の関係に基づき分析した結果、針感は針感点の周囲の数種の神経結合の総合反応の結果、形成されたものであるといえる。
3・2・2 穴位の電気特性。
今では多くの事実が十分すぎるほど経穴に特異的な電気特性が備わっていることを証明している。電流が穴位を通過するとき、その部分が周囲の皮膚より比較的高い導電量を有していることを穴位の低抵抗特性と呼ぶ。五十年代の初期に、日本の中谷が直流電流(電圧は12V)を用いて患者の皮膚に通電した時、皮膚上のある点の電気伝導量がはっきりと一般のそれ以外の部位より高いことを発見した。これを「良導絡」と呼ぶ。 また人々を驚かせたのはこれ等の点の位置と中国の穴位の位置が非常に一致したからである。その後、中国の科学に携わる者たちも多くの実験を行い基本的に穴位に低電気抵抗があることを肯定したのである。Kripperは、穴位の電気抵抗を100~200KΩとし非経穴部位では1MΩであることを調べた。但しWilfsohnのテストの結果では穴位の電気抵抗は794±197KΩとし、非経穴点では1407±306KΩであるとしている。
この二者の差異は56%であり、統計学上非常に明らかな差異をあらわしているといえる。フランスのNiboyetは実験を通じて、電圧が5~10Vの条件下で一般の穴位の電気抵抗は非経穴部位のものより50%も低かった。日本の石川はある種の皮電計と呼ばれる探索機を設計して、内臓が疾病に羅患したとき皮膚上に0.5cmの低電気抵抗点が出現したのを測定した。これを「皮電点」と呼びこれ等の点の位置も経穴とほとんど一致していた。Reichmanis等は心経の「少海」穴と「霊道」穴間のインピーダンスを10例測定し研究した結果、心経上の穴位と非穴位のインピーダンス比は非穴位である傍ら1.5㎝の対照点よりも低く、P<0.05と明らかな差異を見せた。さらに穴位の電気容量は穴位の傍ら1.5㎝の対照グループの電気容量よりも高かった。その他ある報告によれば人体の死亡後の死体の原穴には依然、低電気抵抗性があることが報告されている。例えば南京医学院は死亡後の人体の穴位の電気伝導量は上昇しないとしている。Shenhergerも人体の生前の低電気抵抗を備えた穴位の箇所は死亡後はホルマリン固定をしてその全体の電気抵抗値は明らかに上昇しているにもかかわらず、そこは穴位でない組織部分の十分の一以下であるという結果を得た。
さらにある研究では経穴部位の皮膚上の電気抵抗は各種の生理、病理状態下で初めて変化を起こすもので、特に病理状態下で変化するといえるとしている。この分野では中国は多くの研究を行っているが、結果は人体が疾病状態にあるとき、これと関係のある経絡の穴位の電気抵抗に変化が生じる。この種の変化はあるときは両側の同名経穴の電気抵抗値に不均衡をもたらす。神経、臓腑或いは器官に明らかな機能的変化が生じたとき、例えば食事の前後、排尿の前後、睡眠の前後、運動の前後等では経穴の電気抵抗値にもそれらに従って変化が発生する。それ以外にさらに外界の環境からの影響の表れ、例えば時間的変化、気温、季節、一日の内の時間的差異、鍼灸治療の後、或いは特定の穴位と関係する神経の機能を変化させた(穴位の神経ブロックや神経切除)後、には経穴の皮膚の電気抵抗にはすべての場合変化が生じる。左右の同名経穴の電気抵抗に不均衡が生じたとき、はり治療、きゅう治療を通じてこの種の不均衡を正すことが可能で、これにより治療効果が上がるとしている。
★穴位の低電気抵抗の原因に関して、日本の中谷は交感神経の興奮が引き起こしたこれ等穴位の汗腺及び皮脂腺の開口の増大が皮膚電気抵抗の低下の原因であるとしている。しかしNoss等は穴位の電気抵抗の低下と汗腺の活動の関係については証明できないとしている。石川はまた内臓の病理的変化はその臓器に対応する皮下の血管の変化に反射影響し滲出が増加したのが穴位の低電気抵抗の原因であるとしている。その後、日本の鈴木はこれ等の変化はただ体幹部にのみ見られるもので、四肢においてはこれ等血管の変化は探し出すことができないかったとしている。Lonescu-Tigovsteの指摘によれば皮膚電気抵抗の下がった部位は、往々にして皮膚が圧迫刺激に対して敏感な部位であるので穴位はおそらく自律神経の集中する区域であろうと述べている。実験によれば人体は低電気抵抗点を有するのみならず更に高電位点をも有するということ、これ等は中国の国外で1955年にすでに発見されていることである。これ等電位が周囲よりも比較的高くなった点はおそらく異なった機能的条件の下で発生した変化であるといえ、これ等を「皮膚活動点」と呼ぶ。またこれ等の位置と中国の経穴図の位置を比較して以後に発見された「活動点」の多くも経穴と附合していた。しかし又ある報告によると穴位の特異的電位は証明できないとしている。
ある羊の体表部の高電位点を測定した実験によると、これ等高電位点もちょうど低電気抵抗点にあたることを発見した。Dumitrescu等によると穴位部の皮膚の電位は周りの皮膚の電位より2~6mV高い値を示している事が観察されたとしている。中国中医研究院鍼灸研究所の開発した体表電位測定器はそのインプット抵抗は3MΩ、感度は10μVである。これを水平に多端探索電極を体表の穴位とそうでない部位に分けて固定し、測定を行った結果、穴位と穴位でない部位を比較すると70%の部位に明らかな差異が表れた。 つまりこの種の研究は更に一歩経穴の本質及びその作用や方法のすべてにおいて重要な意義を持つものといえる。
3・2・3 穴位と臨床診断。
人体が疾病を患ったとき体表のある穴位部位に病理的反応がよく出現する。例えば皮膚の過敏感覚や圧痛、組織が板の様に硬くなったもの、弛み、陥凹、隆起、或いは結節の出現、索状物、或いは丘疹の出現、或いは皮膚の光沢の変化、もしくは電気伝導量の増加等々である。これ等の反応は疾病と疾病の経過の違いによって変化し、臨床においては疾病を診断する一つの根拠といえる。近年この基礎の上に、穴位へのはり治療とX線等の物理的検査を結合し、臨床における診断の符合率は非常に高くなった。それはさらに、ある種の臨床上一時的に正確な診断を下しにくい疾病の性質をはっきりさせ、新しい手法を提供したといえる。北京腫瘍医院等は13名の正常人と12例の食道癌の患者に針刺実験を行い観察した。結果は、膻中、天突、合谷、巨闕等の穴位をはり治療するとX線ですべてに食道の蠕動運動が増加し、管がゆるみ拡張し、痙攣がおさまり、併せて食物が速く食道を通過した。これらは上述したこのような穴位の食道に対する色々な影響が、食道の良性及び悪性の病変の鑑別の助けとなったといえる。上海市楊浦区の中心医院では足三里にはり治療する事を採用した。X線下で胃体が狭窄変形し、蠕動が消失した患者に観察を行った。つまりもし足三里にはり治療後、胃体の部分に新しい蠕動が出現し更にその輪郭や寛さに変化が生じれば、これらの患者は胃壁が柔らかくその正常な拡張収縮能力を未だ喪失していないことを証明しているといえ、比較的良性の病変といえる。また同様な条件下での観察で、もし胃壁に拡張と収縮能力がなければ胃壁は厚くなり緊張し硬くなっている、これらは癌細胞が胃壁に沿って成長したもので悪性の病変である可能性がある。ここではこの方法で54例を分析した結果、本人への手術と病理検査を相互に対照比較するよりも、X線での正確な診断率は過去の連続撮影によってもたらされる80.4%から90.7%に上昇した。その他の報告によれば十二指腸潰瘍を患った患者には中脘、右梁門及び右の胃倉の外方二寸の所にすべて明らかな圧痛があった。これら109名を観察し107例がX線による診断と符合した。ある報告では59例の十二指腸潰瘍の患者に観察を行った結果、梁丘、不容、脾兪の陽性反応率が比較的高かった。内容は梁丘49例、不容45例、脾兪52例であった。反応を性質から述べると梁丘は圧痛が主でその他二穴は(結節、湿疹などの)反応物が主であった。又ある者は105例の胃疾患(潰瘍、胃下垂、慢性胃炎、胃癌等を含む)の患者の胃兪、中脘、足三里、陽陵泉、脾兪、上脘、陰陵泉及び地機の八つの穴位に対して観察を行い併せて各穴と胃疾患の関係及びその反応の特徴について比較した。結果は足三里と胃兪の陽性の例が最も多く、陽陵泉中脘がその次、その他の穴位はさらに少なかった。(p<0.01)反応の状況から見て足三里、陽陵泉は索状の反応物が主であった。胃兪と脾兪は局所がゆるみ弛緩したり陥凹したり、だるい感じが主であった。しかし胃癌の時は胃兪には結節状の反応物が出現し、中脘には結節と圧痛が出現した。報告によれば圧痛を指標として100名の肝炎患者を観察した結果肝兪、中都と肝炎穴(内果の上1.8寸)の陽性反応が最も高かった。この三つの腧穴を15例の胆病の患者に用いたところその陽性率はさほど高くなかった。胆嚢の病変の反応点は主に多くは臨泣、外丘及び陽陵泉下一横指の処等の胆経の線上に現れる。それ以外にある報告によれば感染性の肝炎の患者はよく第六胸椎の棘突起の一番盛り上がった部分に圧痛が見られ、これはこの疾病の診断の補助となるものである。国外のある報告によれば272例の慢性肝炎の患者の右側の曲泉穴に圧痛のあるものは192例左の同穴にあるものは80例(単純に左曲泉だけに圧痛のあるものは一例もなかった。)だった。この左右の温度を比較してみると右側が比較的低かった。また左右の穴位の皮膚上のPH値を対比してみると左側が高い値を示していた。それ以外の報告によると、小腸穴(足三里と闌尾穴の間)へのはり治療では、42例の開腹手術後に腸に癒着症状を起こしている患者を対称としてはり治療の前と後とでX線検査を実施し比較検討した。結果はおよそ小腸の盲係蹄の位置とその配列と形状に変化が生じていた。それは腸の蠕動が自由に活動していることを示すものできわめて正常なものであるといえる。また小腸の盲係蹄ほとんど微塵の変化も無いものは癒着があるしている。 本方法は比較的早期の極限的な腸のイレウスの診断率を向上させたものであるといえる。報告によると闌尾穴に対するはり治療とX線検査を結合したものでは虫垂炎の診断率が過去の84.7%から100%と上昇した。つまりはり治療による虫垂の蠕動の増強、腹腔内の分節運動、気泡の移動、腸管の太さ及びラジアンが変化したものは捻転が消失して虫垂内の糞便が排出されたもので、これらは虫垂の生理機能が正常であるものといえる。一方、はり治療後、虫垂に変化がない、もしくは変化がごく僅かのものは虫垂が炎症を起こしその影響で繊維化しているもので、正常な蠕動及び排出能力は失われ、虫垂炎と診断しても差し支えないとしている。
呼吸器系の疾病において、ある報告によれば肺兪穴に現れる陽性率がもっとも高いとされている。一般に慢性気管支炎の時、肺兪と孔最がもっとも多いとしている。また気管支拡張症では、肺兪と膺窓がもっとも多いとしている。肺炎の時は肺兪と五里に反応が現れる。陽性反応が肺兪と結核穴に現れるのは多くは結核の患者である。肺兪と玉堂は多くは肺門のリンパ結核である。
近年ある報告によると合谷穴に針刺する事によって、これを薬物麻酔に代わるものとして用い、非麻酔下カテーテルによる気管支造影に成功を収めた。これは造影の効果が良いばかりでなく、患者に悪心嘔吐感がなく、麻酔薬の量の問題に苦慮することもなく、又患者は術後すぐに食事が可能であるという長所があるといえる。
循環器系の疾病の場合に、ある者は圧痛を一つの指標として100例の冠状動脈の疾病の患者に観察を行った。その結果は神堂、霊道の反応が最も明らかであることが判明しその次が心兪と第6、7頸椎間の傍ら二寸の所であった。但し6例の心筋の炎症の患者は、却って大陵に圧痛が出現した。それ以外にある報告によれば高血圧患者の左側の血圧点に楕円形或いは円形の結節が多く見られた。特に人々の興味を引いたのは右側の血圧点にはすべてこの種の反応は見られなかったことである。
泌尿器系の疾病に関して、ある者が51例の腎臓病の患者の10個の穴位に対して観察を行ったところによると腎兪(じんゆ)の陽性率が最も高かったとしている。その中でも子球体腎炎と腎盂腎炎の主な反応点は腎兪、太谿(たいけい)であり、腎臓結石は腎兪及び足臨泣(あしりんきゅう)であった。またある臨床報告によると三陰交、崑崙、関元等諸穴を軽刺し15分間置鍼し、これを患者の腹部に圧を加え腎盂の静脈を造影する方法に代えて用い103例を観察したところ、その中で造影効果が良かったものは80例に達した。この実験で証明されたように、この方法は上述した穴位にはり治療する事によって腎盂静脈の造影において患者の腹部への加圧的圧迫の苦痛を軽減するだけでなく、更に病理的変化を実際にモニターする事ができた。かつ診断率を高めて、尿路中の小結石や腹膜後の腫塊、先天性の奇形及び早期の炎症等の病変を映しだす等の独自の長所が見られたとしている。
それ以外にある者は大量の人体の体表発光の実験及び各種の排除実験を通じて人体の体表が外界に対して一種の微弱な可視光線ー冷光(luninescence)を放射していることを発見した。人体は正常な状況下では左右の経穴の発光する信号はお互いに平衡であるが、病理的状況下ではこの種の互いに平衡な冷光(luninescence)の信号の平衡状態が崩れ、変化が生じる。この種の変化が現れた点(主に井穴であるが)を病理的発光の信号点と呼ぶとしている。これらは中医診断の客観化に一つの無損傷的な生物物理的方法を添えたものといえる。
3・2・4 穴位の実験研究。
3・2・4・1 血液成分に対する影響。
血液は人体の内環境の平衡を維持するのに非常に重要な意義があるといえる。はり治療は血液中の各種有形成分、化学成分、及び血液中の酵素等に明らかに調整作用を有しており、生理的平衡状態を保たせる働きがあるといえる。
はり治療が白血球に与える影響。
ある実験報告によれば正常な動物の合谷、足三里等の穴位にはり治療すると総白血球数を上昇させ、はり治療の後3時間でそれはピークに達するとしている。具体的分類では好中球が増加し、リンパ及び好酸球等の比率は低下した。以上の変化は24時間後には正常に回復した。しかし豊隆穴或いは非穴位点に変えてはり治療したものでは白血球数のカウントに変化は見られない、もしくはごくわずかであった。
国外のある研究によると瘂門穴を針刺したときその100%に白血球総数の増加、及び好中球の比率の増加を引き起こしたとしている。また脳戸穴を刺激すれば白血球及び好中球の総数は下降したとしている。また脳戸、瘂門にはり治療すると100%に好酸球の減少を引き起こし、大椎にも同様な効果が見られたとしている。華蓋穴にはり治療すると絶対的多数のものすべてに白血球総数及び好中球の数が増加するとし、又併せて瘂門、華蓋へのはり治療は恐らく骨髄における造血機能を促進させる作用があるとしている。
またある報告では放射線療法、化学療法によって起こった白血球の減少した患者に大椎、合谷、足三里等にはり治療し明らかな著効があったとしている。足三里、合谷、曲池、中脘、頭維等の穴位にはり治療すると明らかに白血球数は増加する。好中球の比率もそれに応じ上昇する。脾臓の機能が亢進し、血球数が減少している患者にも同様な効果がある。
期門穴に針刺しても白血球数は増加する。針刺が白血球に及ぼす影響は現象や数量的変化だけでなくかつ質と量上の影響もあるといえる。例えば大椎穴にはり治療すると白血球の細胞は数量的変化を起こすだけでなく明らかに左方偏移を起こす。未分葉核果粒球の比率が増え、且つ過分葉核果粒球の比率が減少する。又あるものは足三里にはり治療すると幹状核細胞の比率が増す。例えば「はり」を他の穴位にしたときには数量上の増加が見られるだけで核の左方偏移現象は見られないとしている。人工的に家兎に細菌による腹膜炎を起こさせると白血球のカウントは上昇するが委中穴にはり治療すると却って白血球は異なった方向に変動し白血球総数はゆっくりと正常値に復活する。ベンゼンを皮下注射し人工的に家兎に対し白血球減少症を起こさせたものの足三里にはり治療すると、白血球は反対方向に変動し白血球総数を高めさせるとしている。このようにはり治療は個体がはり治療の前に元々あった白血球の状態によって影響のちがいが極度に大きいといえる。但しまたそれは一般的に不均衡を調整するものであるといえる。
又あるものは針刺の種類(穴位、手技等)の違いによりその針刺の効果も違うとしている。90匹の家兎を各グループ分けした実験では中等の刺激を足三里に加えた場合に白血球総数は二相性に調節され、またこれを電気バリに変えた場合明らかな単相の抑制状態が現れ、終始白血球総数の増加傾向は抑制されていた。
報告によると大椎肺兪足三里等の穴位で熱帯好酸球増多症を治療したところ、はり治療の後、好酸球の比率は徐々に下降し有効率は100%に達した。また国外のある報告によれば同一人の太谿にはり治療し置鍼二分で鍼治療後は好酸球は33.5%減少した。また10分間の置鍼では好酸球は44.2%減少した。これは針刺の時間、強度のちがいによるものであると考えられる。但し例えば陶道にはり治療したものでは好酸球に増加傾向が見られた。国内外の一部の「はり、きゅう」関係者は然谷、大都、懸鐘、京門、腎兪、神門、内関、太衝、光明等の穴位にはり治療しこのすべてが好酸球に対して各種の特異的影響を有することを発見した。はり治療の赤血球に対する影響では、多くの報告が正常人の足三里、合谷等の穴位は赤血球総数をいったんは増加させ、またヘモグロビンの含有量も上昇する。但しそれを維持できる時間は長くなく、すぐ正常値に戻ってしまう。
毎日一回はりを膏肓、足三里に行っていると五日後に赤血球数が100万/mm3から
337万/mm3に上昇しヘモグロビンは30%から109%に上昇した。動物実験では更に膈兪、膏肓にはり治療して同様の効果を上げている。懸鐘けんしょう(穴位のカテゴリーの内、髄会・ずいえにあたる穴位)は貧血に常用される穴位である。あるものはこの穴位と赤血球の生成と関係があるとしている。はり治療後の赤血球の増加に関する原因には、一般にある学説でははり治療が造血系統の機能を増強させ、造血に必要な物質の利用率を高めているのではないかと言われている。またある学説では血液貯蔵庫に当たる部分から赤血球が外周血管に流入し始めたものではないかとしている。人や動物の足三里や合谷等の穴位にはすべて赤血球の下降率の増加が引き起こされ二日から八日で正常値に戻るとしている。しかし進行性の炎症を併発している患者に対しては鍼治療後症状は改善され、その血沈も却って加速していたものが遅く変化した。ある報告によれば大椎、足三里、曲池、内関等の穴位で治療した8例の脾臓切除の血小板増加症の患者すべてに血小板の数がはり治療を行うにつれ次第に下降し正常にまで恢復したとしている。合谷、足三里、肝兪、脾兪等の穴位で脾性汎血球減少症を治療した結果、血小板数は上昇した。また「はり、きゅう」治療で血小板減少性紫癜を治療して毎回血小板数の増加という良い効果を得ることができた。ここに見られるように血小板の異常という病理状態に対してのはり、きゅうの効果は、機体のもともとの血小板の水準と関係があるといえる。これらより、はり治療は明らかに健康を促進させる調整作用があるといえる。また別の報告によると家兎の耳輪に人工的に炎症を引き起こしたものの承扶、耳門等にはり治療した結果、凝固時間に明らかな短縮が見られた。
はり治療の血糖に対する影響は、ある報告によれば素髎穴へのはり治療は正常人の場合には何ら明らかな影響が見られないにも関わらず、救急でショックを起こした患者に本穴を用いると20分置鍼した後に、その血糖値は明らかに上昇を示した。これは恐らくこのショックの患者のもともとの血糖値がかなり低かったのと関係があると思われる。それ以外の実験ではまず健康人に砂糖水を服用させ45分後にはり治療を行った結果、もともとの血糖値が高かったためはり治療後大多数のものの血糖値は減少した。国外の報告によると糖尿病30例の列缺、気海、太白等対して鍼治療を行った結果、鍼治療後の毛細血管の透過性が上昇し血糖が明らかに下降し、毛細血管、及び静脈の糖の含有量の差も増大した事実を発見した。また別の報告によれば穴位のちがいによって血糖値にもいろいろ異なった影響が出ることもわかってきた。肝兪には血糖を下げる効果が、膈兪には血糖を上げる効果があるというものである。ただこの例は実験例が大変少ないので更なる追試が必要と思われる。それ以外にはり治療の反応は手技にも関係があるといえる。ある報告によれば足三里、合谷、内関、曲池、太白、気街等の穴位に「焼山火」(手技の名)を用いると血糖は上昇し「透天涼」を用いると血糖は下降し、平補平瀉では変化が明らかでなかったとしている。犬の関元、足三里、天枢等の穴位を針刺すると、二時間後には血中の遊離ヒスタミンは明らかに下降したにもかかわらず、非穴位点への針刺ではこの種の変化は顕著ではなかった。また別の報告では一酸化炭素中毒に対する動物実験で人中、十宣、少衝、少商等の穴位を用いて行った。これには非はり治療のグループの設定を行ない、はり治療前後の二つの時期に分けて血中のCO含有量を測定した結果、はり治療グループの血中CO含有量ははり治療前の53.8%からはり治療後15分には25.5%に下降した。同時期の対照グループは45%から30%に下降した。これに呼応するように覚醒時間もはり治療グループは平均4.4分、対照グループは11.5分であった。このようなことからはり治療はCO中毒時のCO性のヘモグロビンの解離を促し人体の覚醒を促すものであるといえる。国外のある研究者は大杼穴(穴位のカテゴリーの骨会)には恐らくカルシウムと関係があるとしている。大杼、飛揚、足三里等に鍼治療をして7分間置鍼するとカルシウムが1mg%増加し、15分では3mg%増加したが更に延長継続して置鍼してもそれに呼応する変動は見られなかったとしている。人中行間等の穴位を用いて血中のカルシウム下降による筋肉の痙攣の患者を治療した結果、はり治療は症状を消失させるだけでなく血中カルシウムの値をはり治療前の8mg%から9.5mg%にまで増加させた。広州第二人民病院では栄養失調の小児の患者の四縫穴に鍼治療を行うと血清カルシウム、リンの値が共に上昇し、アルカリ性ホスファターゼが活性化した結果、カルシウムとリンの積がそれと共に増加し、患者の児童の骨格の発育と成長に大いに助けになったとしている。また正常人の内関、合谷、足三里等の穴位へのはり治療の後には、その多くに血液アンモニアの値が増加して、血液内の残余窒素に調整作用に似通ったものがあるようだがそれほど著明ではないとしている。その他に上述した穴位にはり治療をして五例の急性膵臓炎を治療した結果、患者の平均血中アミラーゼの値は2140ソモギィ単位であったが、第二日目には正常値に戻っていた。これに似通った症例はかなりの数となる。ある者は臨床の観察を通じて、足三里、合谷、照海等へのはり治療はアセチルコリン代謝の作用があることを発見した。また報告によれば家兎の足三里、環跳に電気鍼を加えると、それは筋肉の活動力を増強させ、大量のグリコーゲンを分解させ、血中の乳酸、ピルビン酸の値を明らかに上昇させるとしている。「はり、きゅう」治療は即時に筋中のリン酸、クレアチンを明らかに下降させる。はり治療が筋肉の活動を増強させるのでエネルギーの利用率が増加しリン酸、クレアチンの分解が加速されたためであるといえる。さらにスポーツ選手への臨床試験によれば運動後すぐに選手の足三里に鍼治療を行えば20分後には血液中の乳酸の値が正常値に戻るというものである。これに対して非鍼灸グループでは正常値に回復するのにさらに60分の時間が必要だった。
3・2・4・2 鍼治療の呼吸機能に対する影響。
実験によると体表のある一定の穴位に針治療を行うと動物の呼吸機能を即時に増強させる作用があることがわかっており、換気量、肺活量をも調整することができる。あるものは40名の正常な男女に対し、胃経の色々な穴位に対しての呼吸機能への影響を調べた結果、足三里を針刺し捻転したものは、安静換気量が鍼治療以前より24.9%増加した。酸素消費量は22.8%に増加した。また10分間置鍼後では安静換気量は針刺以前より6.6%増加し、酸素消費量は11.7%増加し、最大換気量は20%増加し、吸気時間は23%延長した。例えば衝陽、厲兌、中脘等の穴位に対する針刺でも呼吸と代謝機能の異なったある程度の増強が引き起こされるが、足三里穴ほど明らかではなかった。同時に天枢穴に針刺したときに安静換気量は針刺以前より13%減少し、酸素消費量は7.9%減少し、また10分間置鍼後では安静換気量は11.8%減少し、酸素消費量は14.6%減少し、最大換気量は11%減少した。梁門穴への針刺でも呼吸と代謝機能の減少が引き起こされる。これ等は異なった穴位への鍼治療は呼吸機能に対して色々な異なった影響があるといえ、その主なものは促進と抑制作用であるといえる。阪橙、等は人迎穴へのはり治療は肺換気量を瞬間的に増加させること、また大杼、風門、肺兪へのはり治療では、一週間連続してはり治療する必要があり、その後初めて効果をあげることができるとしている。但し効果が現れればすぐに治療を停止することにより一定時間効果を持続させ得ることを発見した。Tashkinopetalはメコソールを吸入させる方法を用い、
12例の典型的な軽、中程度の気管支喘息の患者に気管支の痙攣を誘発させ、気管の換気量を43%から56%低下させた。これ等の患者の合谷、大杼、足三里と列缺等の穴位にはり治療したところ、急速に換気量は正常値に快復したばかりでなく、さらに正常値を大幅に超えるという結果を得た。これ等の穴位と非穴位点(肩甲部、前脛部と足背部)を比較したところ明らかな差異が認められた。12例の喘息の患者に気道の抵抗を指標として、胸背部の穴位にはり治療して10分後には気道の抵抗は、平均して24.1%減少し、一時間後には29.9%、二時間後には27.4%減少した。対照グループではそれぞれ2.3%、1%、13.9%の減少だった。この両者を比較すると明らかな差異があるといえる。薩騰三、等は流速計と空気遮断器で天突、肺兪、大杼、太淵、足三里の穴位に対し、はり治療したグループを治療前、針刺後に分けて、その気道抵抗を測定した結果、吸気或いは呼気の段階で気道抵抗の増加したものはすべて下降し、特に呼気時の下降が明らかであった。ある実験では動物(家兎、猫、犬)の素髎、人中、会陰などの穴位にはり治療すればこれ等はすべて呼吸を即効的に増強し、呼吸の一時的停止に対して救急的作用を有しているとしている。素髎、人中穴へのはり治療がこれ等の呼吸反応を引き起こす発生率は会陰穴へはり治療したときよりもはるかに高く(素髎92%、人中は85%、会陰は45%)はり治療時の反応も比較的はっきりしている。
ある者が10例の気管支喘息の急性発作の患者の定喘穴にはり治療したところ、その臨床観察において1例のすぐに窒息様の発作が発生した者を除いて、残り9例の呼吸困難にはすべて大小の程度の差はあれ、症状の軽減が見られた。さらに又ある者は一例の心機能不全の患者の心原性の喘息32~36回/分に神門穴へのはり治療の針感が心経を伝わって胸部に到達した後、すぐに24~28回/分へと変化した。また胃、十二指腸潰瘍においては、その急性穿孔期の激烈な痛みによって引き起こされる呼吸運動の増加とその幅の減少や、特に腹式呼吸の幅の減少が顕著である。これ等に対しある者が足三里、中脘、梁門、天枢、に強刺激を加え併せて通電したところ一時間後には63.4%の患者の呼吸波の幅が明らかに広がり、その中でも特に腹式呼吸の幅が増大したとしている。
はり治療は又、気管支の平滑筋の運動機能にも調整作用を有しているといえる。ある報告によれば大椎、膏肓、肺兪、大杼、心兪、合谷やその他の背部兪穴にはり治療すると大多数の気管支喘息の急性発作は停止、或いは著しい軽減がみられた。
あるものが27例の規定処方によっても未だ症状の緩解が見られない喘息の患者に両耳の肺穴と体針を合谷、太淵、曲池、足三里と殷門、肺兪、等の穴位に電気バリ治療をした後、一般には5分から45分以内に緩解が得られた。 又ある報告によれば116例の気管支喘息患者を治療したものでは、大椎、肺兪、天突、膏肓、中府、気戸等に鍼と灸を併用して治療した結果27例が3年以後も再発が無く完治した。また症状が明らかに好転したものは50例で発作の回数の減少、或いは発作の症状が軽微になった。無効のものは39例であった。報告によると新生児の窒息への鍼灸の有効率は100%に達し水溝穴が最も効果が良く、十宣、素髎、百会がそれに続き作用が減弱するとしている。
3・2・4・3 鍼治療の循環器系に対する影響。
鍼の心拍に対する影響。その主なものは心拍が比較的速いものを遅くする、また遅いものを速くするものであるが、一般的には速いものを遅くする傾向が強い。報告によれば健康人の内関にはり治療したところもともと心拍数が51回/分以下のものは鍼治療後に心拍数は増加した。もともと心拍数が75回/分以上のものははり治療後、その心拍数は減少する傾向を見せた。もともと51回~75回/分の間のものははり治療後、多くは何も明らかな変化は見られなかった。この種の調整作用は心拍数の異常という症状において最もはっきりしているといえる。報告によれば各穴位間の心拍数に対する影響には相対的特異性が存在するとしている。例えば内関、間使、心兪等の穴位は多くは心拍数を減少させ、通里、素髎等の穴位への鍼治療は多くは心拍数を増加させるとしている。ある報告では足三里、神門、衝陽、人迎、睛明、攅竹、承泣等の穴位にはり治療すればすべて心拍数の減少を引き起こすとし、翳風、聴宮、聴会等の穴位への鍼治療はこの様な作用はなかったとしている。このように各穴位間の心拍数に対する影響には相対的特異性が存在する。
またある実験は家兎に副腎皮質ホルモンを注射し心拍数の低下を作り上げ、これら78匹の動物に対し1099回の実験を行った結果、心臓と最も密接な関係のある心経(神門、少海、極泉)心包経(内関、曲沢、天泉)と三焦経(外関、天井、臑会)等の穴位にはり治療したとき明らかにこれらに副腎皮質ホルモンによる心拍数の低下を軽減させる作用があり、併せて心拍数を迅速に正常値に回復させる事を発見した。また心臓と関係のある腎、肝、脾、胃、小腸等の経穴にも一定の回復作用があるとしている。また肺大腸と膀胱と胆などの経穴へのはり治療はそれほど明らかな効果はなかったとしている。
報告によれば内関、足三里を配穴したものでは副腎皮質ホルモンの心拍数に対する低下作用を大幅に削減でき、併せて迅速に正常値に回復させるとしている。しかし、これと同時に例えば心と相克関係の腎経の経穴、交信にはり治療すれば内関足三里を刺した効果はすぐに明らかに減弱した。臨床報告によれば犬の陽地穴にアセチルコリンを注射し心拍数の増加を引き起こし、例えば注射の前に先に内関に鍼をするとこの効果を増強することができるとしている。またある報告によれば30匹の家兎に実験性の除脉を作り上げ、はり治療の後にその回復時間を観察したところ、内関は13.43±1.05分で、神門は16.79±1.73分、足三里は16.90±0.59分で、対照グループは23.13±1.48分であった。実験グループと対照グループの比較ではそのP値は<0.001。<0.01と<0.001であった。またはり治療グループ同士の比率では明らかな差異があった内関と足三里穴のはり治療グループ(P<0.001)以外の全てでは顕著な差異は存在しなかった。ある指摘でははり治療の心拍数に対する影響とはり治療の手技の間には密接な関係があるとしている。補法は多くは心拍数の減少を引き起こし、瀉法は心拍数の増加を引き起こす。併せてここでははり治療の心拍数に対する影響は主に自律神経系統の機能の調整を通じて起こるものであるとしている。
鍼の心臓の収縮機能に対する影響。
あるものが46人の健康人に標準二誘導を指標として神門と衝陽穴へのはり治療の心電図への影響を観察した結果、P波の高さの大幅な改変したものは50%を占め、その幅が改変したものは45%を占め、P波とT波の主な変化は幅の改変にあった、P波は増幅しT波は多くは減弱した。P-RとQ-T間期はあるものは延長し、あるものは短縮したが主に延長したものが主であった。あるものが正常人の通里穴にはり治療した結果73.3%の被験者の心電図の各波にそれぞれ異なった変化を生じた。例えばもともとP波の無かった者にP波が出現し、もともとP波のあった者はP波の下降と上昇が現れた。QRS波群にも両相性を持った改変が見られた。この種の改変は胸前誘導で最もはっきりしていた。心臓病の患者の心兪と石門穴にはり治療した後、心電図にはP-P間期の延長、QRS波群が狭くなりQ-T間期は短縮し、T波は増強増幅した。そのほかにバリストカーディオグラム、ベクトル心電計とX線撮影を用いて神門大陵等の穴位にはり治療して、それの心臓病の患者の心臓への影響を観察した。その結果多くの状況下でバリストカーディオグラムの収縮波は増強し、併せてX線撮影でははり治療前の観察では左心室と大動脈弓は減退し変形しており、収縮性の湾曲変斜と拡張期隆起の減弱等が見られた。はり治療の後左心房は増大し収縮性偏斜は減弱し、拡張期の隆起も大きくなった。これ等の変化は全てはり治療が心筋の収縮力を増強し、心機能を改善できることを説明している。その他にある動物実験では犬にstrophanthin K或いはGを注射して房室ブロックと重篤な不整脈を作り出した。その後、内関、交信と非経穴点をそれぞれはり治療した結果内関にはり治療した者は房室ブロックと重篤な不整脈は完全に消失し、交信はこれに準じ、非経穴点はほとんど効果はなかった事などがわかった。
鍼の血管の収縮に対する影響。
一般的に血管の緊張度が高いときには、それを下降させ、拡張させる。血管の緊張度が低いときにはそれを増加させ収縮させることがわかった。用いた穴位は上肢の遠端の穴位が最も有効であった。ある実験によれば手指と耳のプレチスモグラフィの観察で合谷、外関にはり治療を行えば血管の拡張を引き起こし、また却って内関に治療すると血管の収縮を引き起こすことが発見された。またある者は動物実験で頂窓開脳法で解剖鏡下で電気針の刺激の脳血管に対する拡張収縮作用を観察した。電気バリで水溝、天突、天牖、足三里、等の穴位を刺激したとき、弱電流刺激のときには脳血管の動脈が充血し(20%~50%血管が拡張した。)、強電流刺激では却って脳血管に激烈な収縮を発生させた。(30%~50%血管の直径が減少した。)また交感神経を切断した後にはこれら反応は再び現れなかった。これについて作者が考えるに、この弱い電気鍼の刺激が脳血管の拡張を引き起こすという結果をある種の脳血管障害の疾患の治療に応用すれば、特に脳血栓の形成と脳梗塞にはおそらくとても良い結果を収めることができるはずである。その他には、ある者ははり治療の手技の血管運動反応に対する影響を観察する実験の中で、足三里に「焼山火」の手技を用いると脚部に温熱感が現れることを発見した。また同時に上肢の血管には弛緩反応が現れた。また同穴位に「透天涼」の手技を用いると足に涼感が血管の収縮反応を伴って現れた。またある者が健康人の17箇所の異なる経脉の穴位に針刺して観察を行った結果、全てに血管の収縮反応が見られた。その中でも合谷、足三里の作用が最も強力であった。またある者が家兎の足三里にはり治療したところ家兎の耳の血管は拡張し、皮膚温は上昇した。その他の報告によれば曲沢と足三里穴にはり治療したところ、置鍼している間と抜針した後の無条件血管収縮反応の強さは明らかに減弱を示した。これらは針刺が無条件血管収縮反応を明らかに抑制する事ができ、それらと針刺前を比較すると(P<0.01)と明らかな差異が見られた。しかし太陽穴をはり治療したものは何ら明らかな差異は見られなかった。これは太陽穴は無条件血管収縮の強さに対して何らはっきりとした抑制作用を持たないことを説明しているといえる。さらに報告によればはり治療は血圧に対して明らかな調整作用を持っているとしている。それは収縮期圧、拡張期圧と平均動脈圧に対して影響可能なだけでなくまた、脈圧差にも調整作用を有しているといえる。しかしながらその影響が最も大きく、変化が最も速いものは収縮期圧であった。またある者は高血圧患者の45個の腧穴についてのべ1500回、これ等を使用し選別した結果、降圧効果が最も明らかだった穴位は石門、人迎と足三里であった。その他のある報告では人迎穴の降圧作用が最もはっきりしており、とりわけ収縮圧に対するものが最も顕著であったとしている。ある研究ではクラーレ処理した家兎を用い内関穴に電気刺激を加えると血圧を上昇させると指摘している。また足三里穴を刺激した場合には血圧は多くのものは変化せず或いはやや下降を示した。報告によると合谷、内関、三陰交と太衝の四穴で高血圧を治療した結果、その有効率は88,2%であった。但し曲沢、尺沢、曲泉、陽陵泉等の穴位に針を刺したときには有効率は67,5%であった。さらにある者は湧泉穴に鍼治療をしても比較的良い血圧下降作用があるとしている。
ある実験では、例えば家兎にアドレナリンを注射して高血圧状態を作り出して、この基礎的状態の上に足三里、内関に鍼治療をすると血圧の下降が見られたとしている。それ以外に各種のショック或いは低血圧状態に対し鍼治療を行うと多くの例では針刺後五分から三十分以内に血圧は上昇し始め、更に比較的安定した状態を保つとしている。またある者が犬に軽度のハローセン麻酔をかけ、その後、長強にはり治療し捻針したとき明らかに心臓の排出量と拍出量が増加し心拍数と平均動脈圧は下降し、末梢抵抗は減少した。これに対して電気バリを非経穴点に施したものではその変化は明らかではなかった。しかし人中穴に「きゅう」治療を行うと心臓の毎分の拍出量と毎回の拍出量は明らかに増加し、末梢抵抗は顕著なもので2時間から4時間の長きにわたり下降線を示し、心拍数と平均動脈圧と脈拍圧は「おきゅう」を始めた初期には顕著に上昇を示した。足三里のきゅう治療は心拍出量を減少させ、末梢抵抗はこれに呼応して増加する。但し非穴位点ではこれはまったく顕著でなかった。ショックに対するはり治療の臨床効果は一般には軽度のショックが最も好い。湖南医学院の第二付属病院では素髎、内関等の穴位にはり治療を行い160例のショックの患者を治療した結果、著効が122例で全体の76.3%を占めた。また好転は18例で11.2%を占めた。無効は20例で12.5%であった。その総有効率は87.5%であった。実験により失血性ショックの家兎は動脈より大量出血した後、動脈圧は顕著に下降し大多数の動物の心摶は増大し、心電電位は減弱し、血流速度は減弱する。また総頸動脈圧迫試験は減弱或いは消失する。 しかしこれらの家兎の人中穴にはり治療をした後には循環機能は明らかに回復する。具体的変化は血圧が上昇し、増大した心拍数は減速し心電電位が増加し、血流速度は加速し、総頸動脈圧迫試験の回復と増強であった。 またある者が24匹の家兎と23匹の猫に人工的に出血性のショックを作りだし、その後に足三里、湧泉にはり治療すると、はり治療の後に呼吸機能は明らかに興奮を示し、血圧は上昇し、症状は改善された。これ等により、はり治療は出血性のショックに顕著な作用がある事を証明した。またある者は8匹の家兎を用いて8回実験を行った。それはそれぞれの两側の迷走神経を切断した後に瀉血し血圧を40mmHgから50mmHgに維持させ、その後に両側の内関穴に電気バリを行ったところ、血圧は各猫とも5mmHgから30mmHgの幅を持って上昇し、平均では14.62mmHg上昇した。これ等を統計学的処理した結果は(P<0.01)であり差異は顕著であった。また電気鍼を両側の足三里にすると血圧はわずかながら下降した。ある者ははり治療によって血圧を上昇させる力が比較的強い穴位を選び出した。それは素髎、人中、湧泉、十宣、合谷、内関、足三里、百会等であった。耳針では皮質下、腎上腺、内分泌、それに交感区等の穴位である。ただし、又別の報告によれば家兎の人中足三里、内関と素髎には全て顕著な血圧上昇作用があるとし、特に素髎穴が最も作用が強力であるとしている。
鍼の静脈圧に対する影響。
報道によると、心臓病の患者の神門、大陵、合谷に針刺したとき静脈圧にそれぞれ違った程度の下降が見られた。その中でも神門、合谷を取穴したとき静脈圧の下降が最も顕著であり、平均71mmHgの下降が見られた。特に心臓病の患者に対する作用が最も顕著である。鬱血性心不全の患者の治療においてはり治療が引き起こす静脈圧の下降は心不全の症状を好転せしめるものである。
3・2・4・4 鍼治療の消化器系に対する影響。
まず唾液腺の分泌に関しては、電気鍼を頬車穴に行うと唾液の分泌が減少するとした報告がある。健康人の両側の合谷、足三里にも同様な効果があるとしている。ある者が110例の健康人の足三里に針刺すると唾液のアミラーゼの含有量が顕著な増加を引き起こした。かつそこでは捻転の方向の違いによる差異も見られた。拇指を前に出して捻転すると唾液のアミラーゼの含有量は増加し、左右に捻転したときにはそれは顕著ではなかった。さらにもう一つの報告では健康人の合谷にはり治療を行うと、唾液中のプロテアーゼ、唾液中のアミラーゼ、塩素イオン、と滴定可能アルカリ度、及び唾液の電気伝導率には全て何の影響もなかったとしている。これ以外に、またある者は健康人の足三里にはり治療を行うと味覚閾値を一般的に上昇させることができる事を発見した。これははり治療が味覚器官の機能活動を変えうることを証明するものである。また別の実験ではX線下の観察で、天突、膻中、合谷、巨闕等の穴位へのはり治療が健康人の食道の蠕動運動を増加せしめ、その内径をも広げただけでなく、また更に食道における患者の癌腫瘤の上下段の食道の蠕動にも同様な変化を呈しせしめた。その他の報告によると、天突、神道、至陽、中枢等の穴位に対するはり治療は食道の蠕動を減弱させ、さらにそのレリーフの現像効果を明らかに上昇させた。またある者が足三里穴へのはり治療の胃の機能に対する観察を行ったところ、原機能が衰弱しているものは軽刺激によってそれを興奮させることができる事を発見した。その具体的変化は波幅が増大し、その周期が加速し、胃の酸度が上昇したが、胃の内圧の変化は大きくなかった。
一方もともと胃の機能が亢進している者は、強刺激でそれを抑制できた。つまり波幅は減少し周期は遅くなり、胃の酸度は下降し、胃液の分泌量が減少し、胃の内圧も多くは下降線を示した。
ある者はピロカルピンによる胃の典型的な収縮波群を指標として用い、或いはエゼリンを静注する事よって胃の運動を活発化させた基礎の上に犬と兎の足三里、中脘、胃兪にはり治療をしたところ明らかに胃の活動を抑制できたとしている。飢餓収縮を起こした犬の胃に対し、その足三里にはり治療するとその飢餓収縮はすぐに減弱させることができるとしている。 また食物が胃に入ってもその収縮が顕著でないとき、足三里にはり治療すると胃の微弱な収縮運動はすぐに増強された。また胃に脂肪が入った時に足三里にはり治療すると脂肪の胃に対する抑制作用を減弱させることができるとしている。またある者が10例の胃、十二指腸疾患の患者に胃の遊離酸、結合酸の測定を行った。その結果、5例の中脘と足三里にはり治療を行ったグループには、ヒスタミンを注射したものと同じ結果があった。つまりそれは胃液の分泌を促進させる作用があるということである。それ以外の5例は公孫、内関、梁丘にはり治療をしたグループは得られた結果は上記に相反して、胃酸の分泌は抑制されたものだった。しかし胃酸の増加減少に関わらず、すべてに遊離酸の変化が主に見られ、結合酸の変化は大変少なかった。胃潰瘍の患者に対して足三里のはり治療を行うとその多くは胃の蠕動運動を増強し、幽門が開き排出が早まった。上海市楊浦区中心医院はX線検査法を採用し、はり治療の胃の運動の変化を観察した。それによればはり治療は胃の蠕動の波数、波幅、胃張力、及び排出時間に対する確実な作用を有しており、更に足三里にはり治療したものは、その他の胃の経絡上の穴位でないもの、それに非経穴部位のものに比べこれ等作用が顕著であった。はり治療が胃の運動に対する作用について、報道に依れば手三里、胃兪、上廉、下廉、商陽等の穴位に針刺すると胃の蠕動を活発にさせるとしている。また足三里、幽門、中脘等に針刺すると胃の蠕動を緩慢にさせる。ある者は、はり治療の胃の運動に対する影響は往々にしてその刺激の強弱に関係があるとしている。実験によると20周/秒5Vの電気バリでを家兎の中脘等の穴位に軽刺激を加えると胃の運動を活発にさせることができ、20周/秒50Vの電気バリで家兎の同じ穴位に強刺激を加えるとすぐに抑制作用が現れた。
また胃電記録図を応用して観察したとき、胃兪に対して電気バリを行うとその多くに胃電記録図の波動の増強を引き起こす事が発見された。但し一部の実験では針刺前の胃電記録図がすでに顕著な活動を呈しているときには、電気バリを胃兪に行えば胃電記録図の抑制を引き起こすとしている。国外の報道によれば胃潰瘍、十二指腸潰瘍の患者に対して、その上脘、中脘、下脘、天枢、肝兪、胆兪、脾兪、胃兪、に外関、合谷、曲骨、足三里、等の穴位を配してはり治療を行った結果、大多数の患者が5回から6回の治療の後に主症状は軽減し、X線検査では病巣は徐々に癒合し、胃液の分泌は多くは高分泌状態を保持していたが、胃液の総酸度と自由酸の多くは正常化する傾向が見られた。さらに国内のある報告によると潰瘍のある患者の足三里にはり治療を行うと大多数の患者の胃液の分泌は減少し酸度は変わらなかった。また更に足三里にはり治療を行うと家兎の大網膜の実験性の胃の穿孔に対する修復作用を促進させ、パブロフ小胃、及び全ての胃フィステルのある犬はヒスタミンによって胃液の分泌量、胃の酵素、胃酸の排出量および胃蛋白濃度は増加したが、更に酸度の変化は顕著ではなかった。すでに報告では足三里、合谷、三陰交等の穴位はもともと低下していた胃の遊離酸、総酸度、ペプシン、を迅速に快復させることができる指摘されている。 はり治療を四縫穴にしたあと、ペプシンの活性は上昇しもともと胃酸濃度の比較的高いものはこれを下降させる。また比較的低いものには上昇が見られた。またある者ははり治療を足三里、合谷、環跳、承山、風府、風池等の穴位に行うと胃酸及びペプシンを数値が高いものは下降させ、低いものは上昇させることを証明した。小腸に関しては動物、人体に関わらず鍼灸は一定の穴位、例えば足三里、蘭尾穴、公孫、三陰交、四縫、内庭等はその絶対的多数が小腸の蠕動を増強させる。或いは小腸の運動に対し調節作用を引き起こすとしている。回虫による腸梗塞、半梗塞の症例に対しては腸管の普遍的な、或いは前期、後期のある一定の時間内での拡張がみられ、腸管の痙攣が解け、蠕動が活発となり排出が加速した。健康人の中脘穴にはり治療をすると腸鳴音を亢進させることができる。X線透視下では空腸の活動が増加し、バリウムが迅速に移動するのが観察され、同時に小腸の蠕動に調整作用を起こすことが発見された。その他にこの様な報告がある。中脘、合谷、曲池、胃兪、手三里、承山等の穴位に等の穴位にキュウ治療を行っても空腸、回腸の蠕動に瞬間的変化が発生し、蠕動が強いものは減弱し、弱い者は増強する事が発見された。続して家兎の足三里にはり治療を続け、八日後には小腸の酸性ホスタファーゼの活性が高くなった。あるものは、小腸瘻の犬の脾経の公孫にはり、きゅうを行うと、小腸液の分泌が顕著に増加がみられた。しかし脾経以外の穴位の曲沢では変化はそれほど大きくなかった。また陰谷、公孫、に足三里を加えたものに、はり、きゅうを行ったものでは主に腸液の分泌に抑制作用を引き起こした。報道によると回虫病の患者の四縫穴にはり治療を行うと腸中のトリプシン、膵臓アミラーゼとステアプシンの含有量が増加した。中山医学院は十二指腸にドレナージを挿入して膵液を収集した。その結果、家兎の四縫穴にはり治療を行うと家兎の膵液の分泌過程は強化される事が発見された。この様に四縫穴にはり治療を行うと膵液の分泌に対して顕著な促進作用があることがわかった。報道によれば、足三里、胆嚢穴、心兪、丘墟、陽陵泉等の穴位にはり治療を行うと胆嚢に明らかな収縮作用があるとしている。期門、日月にはり治療すると胆管口の括約筋の緊張収縮が置鍼したとき弛み、同時に胆嚢の運動を助けていることが観察された。国外ではあるものが皮内針で人の胆兪、肝兪、日月、左天宗にはり治療すると30分経過した後に胆嚢のX線像に縮小が見られた。これはハリにより胆嚢が収縮した現れであるといえる。またある者は報道によると井穴に針刺し胆嚢を拡張させ、郄穴に針刺し胆嚢を収縮させた。しかし兪穴、募穴を針刺しても何の傾向も見られなかった。犬の丘墟、陽陵泉、日月等の穴位に針刺するとオッディの括約筋が弛緩し、胆管の圧力を下降させるとしている。太衝、太白、胆兪、肝兪、脾兪等の穴位にはり治療をすると又これとよく似た作用がある。大連医学院が総胆管切開ドレナージで患者に胆管造影を行った時、丘墟、陽陵泉、日月にはり治療を行うと総胆管に明らかに顕著な規律性の収縮が出現し、蠕動は明らかに増強し、造影剤をオッディの括約筋を通過させ、十二指腸に入れることができた。それ以外に巨闕、天容、陽陵泉、足三里へのはり治療はオッディの括約筋に対して顕著な抗痙攣作用をも有している。その上、総胆管の収縮を促進させ、胆汁の分泌と良好な鎮痛作用があった。胆汁の排出に関しては、長期胆嚢外瘻の犬の曲泉、丘墟、侠谿、にはり治療を行うと、胆汁の分泌が即時に顕著に増加することを発見した。また日月、陽陵泉等の穴位にもよく似た作用があった。しかしピロカルピンによって犬の胆汁を顕著に増加させた上で四縫穴にはり治療を行うと胆汁の流出量を減少させる作用があった。実験によれば犬の盲腸の内壁に直接βー連鎖球菌と黄色ブドウ球菌の混合菌液を注射して、実験性盲腸炎を起こし、強刺激で曲池、闌尾穴にはり治療を行うとこれらには実験性盲腸炎に対して確実な治療効果があることが証明された。上海市では正常人と盲腸炎の患者にX線検査及び手術による直接観察でこれ等全てに足三里、曲池、気海、復溜、天枢、闌尾等の穴位にはり治療を行ったところ、これらが盲腸の運動を増加させ、緊張度が増加し、或いは虫垂弧度が変動し、移動、蠕動、が見られ、或いは分節気泡が見え、糞石の移動と内容物を排出させる事を発見した。人工的に虫垂炎を作った環境下では、イレウスのある犬と家兎の闌尾穴にはり治療を行ったものでは盲腸の蠕動が増加したものは見られなかった。
鍼灸の大腸の運動機能に対する影響では家兎の足三里、手三里、長強、大敦、等の穴位にはり治療を行い観察を続けた結果、大腸の機能に対して、明らかな調整作用があることがわかった。正常家兎の足三里、上巨虚、内庭等の穴位にはり治療を行ったところ、全ての穴位が腸蠕動を促進させた。また大腸の蠕動が比較的亢進したもの或いは緊張度が比較的高いものに対してははり治療を行うとそれらが減弱した。また別の報告では、足三里、大敦、三陰交、陰陵泉、崑崙、太谿、内関、合谷、陽池、中脘、百会、尺沢、腕骨等の穴位にハリをすると、蠕動が見られないか或いは蠕動がとても弱っているものの下降結腸下部及び直腸の蠕動が増強され、その上便意も見られた。ピロカルピンを用いて結腸運動を亢進させた後にはり治療を動物の片側の足三里に行うと、多くの状況下ではその症状は抑制的にはたらいた。国外においてはX線検査を用いて外陵、気衝、幽門、小海等の穴位にはりをおこなうと、下降結腸の遠位端の頑固な迷走神経の過敏現象を消失させることが発見された。
3・2・4・5 鍼治療の神経系に対する影響。
ある報告によれば三匹の条件反射固定型の犬に実験を行った。これは条件反射に対するはり治療の影響についての観察を行ったもので、足三里にハリを行うと、大脳皮質の興奮過程をやや増強させたが、抑制過程には影響を及ばさなかったことが発見された。百会にはり治療を行ったものでは最初の幾つかの陽性条件反射には影響がなかったが分化相(陽性条件反射)の後、抑制過程に顕著な増強が見られた。これらは足三里と百会穴へのはり治療がそれぞれに大脳皮質の興奮過程及び内抑制過程を増強させたことを意味している。また更にあるものが実験性に引き起こした犬の神経官能症の翳風穴にはり治療を行った結果、あらゆる陽性条件反射量は全て迅速に増加し、併せてゆっくりと正常値に回復し、刺激の強度と反応間の関係は暫時回復し、分化的刺激の鑑別に対しては徐々に完全化した。これ等のことから翳風穴に対するはり治療は大脳皮質の神経過程の平衡を回復させることが出来る事を意味しているといえる。はり治療の脳波への影響では、ある者が家兎の足三里及び曲池穴に電気バリ治療を行った結果、18匹のウサギの中で13匹の脳波の徐波が顕著に増加した。ハルビン医科大学では13匹の健康な家兎に108回の実験を行った。それでは足三里穴にはり治療を行った大部分の実験例(61例)の脳波の幅が増加し、周波数もゆっくりとなった。またあるものは運動時の値と視覚時の値と視-運動反応の反応時を指標として数十名の健康人と病人に対して、はり治療が中枢神経系統の機能に及ぼす影響の研究を行った。はり治療を行った穴位は合谷、下関、太陽、曲池、中脘、陰陵泉、神門、天枢、三陰交等があり、強刺激の多くが運動従属時値が増大することを発見した。それは即ち大脳皮質の運動区の中の抑制過程が増加したためで、一般の健康人ではこの抑制過程の増加は比較的遅くゆっくりしたものである。病人に軽刺激を与えたとき、半数の大脳皮質は興奮過程を呈する。しかし健康人の場合ではただ少人数にだけ抑制過程が見られるものである。この実験では同時に激痛、不眠及び消化器系統疾患の患者に対して針刺し抑制過程を引き起こしたものではその程度は深く、その他の病例では比較的浅い事が発見された。これ等は明らかに大脳皮質の機能障害の程度と関係のあるものであるといえる。視覚時の値の変化は基本的には健康人に針刺したものの運動従属時の値の変化と一致している。ある実験では、動物の大脳皮質の運動区を人工的に優勢にした状況の下で皮質運動時値と適応速度を測定しコンピューターに記録した。そこで足三里に鍼をしたところ優勢運動反応はただ一時的に消失し、更に何回重複してはり治療してもそれ以外の変化は見られなかった。しかし大敦をはり治療したときにはこの種の効果は比較的堅固であった。
又ある実験では足三里、合谷、内関、神門、通里、翳風、人迎等の穴位にはり治療すると脳波に対する影響が凡そもともとα波の幅が比較的狭かったものはα波の幅が大きくなった。一方その他のものは減弱した。更にそれ以外の多くの報告では健康人の合谷、内関にはり治療すれば脳波の波長は増強し、徐波は増加しその幅は広がった。(大脳皮質の抑制過程の増強)健康人の足三里、或いは両側の扶突穴にはり治療すると全てにおいて脳波のα波の抑制とβ波の増加(大脳皮質の興奮過程の増強)を引き起こした。癲癇の大発作の患者十人の神門、陰郄、通里、通天、百会大陵等の穴位にはり治療すると四例の患者の脳波が規則的な傾向を示し、或いは病理性電位が下降した。神門と印堂穴にはり治療すると五例の小さな癲癇発作の患者の中で五例の小発作の患者中三例に有効であった。しかし癲癇の電気活動を促進させるものも現れた。また側頭葉の癲癇及び続発性皮質癲癇の大多数には無効であった。国外でもすでにある者が行った大脳と脊髄の各種疾患や外周神経の病変と自律神経のバランスの乱れ等の疾病の患者73例の報告によるとはり治療前の脳波の特徴は基本的リズムの一般的な障害と病理的徐波の出現である。またある症例では更に突発的な高い同期活動の棘波を呈した。足三里、合谷、陽陵泉、或いは印堂穴にはり治療し5分から10分後、脳波計はすぐに弥慢性の変化を呈した。その特徴は振幅の変化及び生物電位の正常化であった。作者は又21名の脳腫瘍の病人の生体上において観察を行った。それはこれらの足三里にはり治療を行うと4分の3の病人の脳波計に変化を生じさせ、同期活性を明らかに増大させ、病理活性を減少させ、生物電位の振幅は一般的に増大させた。その他の報告に依れば鎮静穴(百会、身柱)にキュウ治療を行うと24秒後に明らかなアルファ波の増強、波幅の幅は高くなり、その持続時間も長く、減衰過程後期が遅れるという変化が出現し始めたが、これらと対照グループ(合谷)に施灸したものではα波の増強はとても少なかった。またある実験では白ラットの人中穴にはり治療すれば大脳皮質の酸素分圧が増加し、股関節部にはり治療したものではこれが減少した。また合谷穴をはり治療したとき脳血流図の容積、波幅は減少し、脳血管の緊張度は高まり、脳への血液供給量が悪化した。しかしまた足三里にはり治療したときには脳血流図の容積、波幅は増強し、脳血管の緊張度は減少し、脳への血液供給量は好転した。別の報告に依れば猫の合谷穴にはり治療すれば大脳皮質での歯髄の誘発電位を明らかに抑制したとしている。これは0.25%の塩酸アトロピンで合谷の投射区の機能状態に変化を生じせしめた時、上述した作用を平均13%増強せしめた。またある報告によると足三里、曲池、合谷等の穴位に電気バリ治療を行うと電気バリが内臓大神経の中枢端を刺激して起こる大脳皮質の誘発電位をある程度抑制することができたとしている。しかしこの種の抑制反応には速昇速降の特徴があり、併せて足三里穴の効果が最も明らかであったとしている。またある者が白ラットの殷門穴に電気バリ治療を行った前後の脳脊髄液中のグルタミン酸、GPT、GOTの含有量を測定した結果、はり治療グループは対照グループよりも高い値を示すことが発見された。これ等より針刺後に脳中の何らかの恐らくグルタミン酸と関係のある物質の代謝が変化し、脳の代謝の速度が増加して脳の機能が調整された事を説明している。又別のある者の実験中に鍼治療或いは電気バリ治療を白ラットの足三里穴に行うとペントバルビタール深麻酔をした動物の脳中のアセチルコリンの含有量の増加を防止することができ、同時に動物の覚醒を早める事を発見した。またPTZ(中枢神経を興奮させる薬剤)により興奮させた動物においては脳中のアセチルコリンの含有量の低下を阻止することができ、動物の状態は安静だった。浅い麻酔の状態において針刺は正常値よりやや高いアセチルコリンには何の影響も見られなかった。これ等より鍼治療、或いは電気バリ治療を足三里に行うと中枢神経系統の機能バランスの崩れた状態に調整作用があることがはっきりした。また別の報道によれば白マウスの承扶穴に鍼治療をした後、脳の組織内のアンモニアの含有量は明らかに増加した。これらは脳機能が短期内の興奮状態にあることを意味する。さらに正常なマウスの脳の乳酸の含有量にも増加が見られた。麻酔下の実験動物の脳の乳酸の含有量が低下したものが明らかに高い変化が見られた。また小児の癲癇の状態下の脳の乳酸の高数値も明らかに下降した。ある者は健康人において、穴位へのはり治療の疲労回復に対する影響を研究した。彼らは力器によって右手示指の筋肉の収縮曲線を記録した。示指の疲労が発生した後に(このとき筋肉の収縮曲線は下降している。)、足三里にはり治療を行うと(或いは合谷穴に)、絶対多数の被験者にすぐさま食指の収縮曲線に明らかに増大が見られた。また一部の被験者には併せて示指の動きが心地よく軽くなった感覚を訴えた。作者はこのとき筋肉の疲労の実質は大脳細胞の疲労であり、これ等は大脳皮質の保護性抑制の発展した結果であると理解する。はり治療が疲労を回復させるという事はつまり脳細胞の機能回復を促進させるということを意味するものである。ある者は皮膚表面に当てた電極で尺骨神経を刺激し誘発した小指球の筋の筋電図によって27例の脳血栓症の恢復期の患者の筋電図の幅への影響を観察した。その結果は患側の扶突、天柱をはり治療したものは筋電図のパルスの幅は上昇し(p<0.05)それははり治療後5分から始まり45分間持続した。また百会と病巣側の正営、懸顱では影響はそれほど顕著ではなかった。臨床における観察では肩髃、曲池、合谷、環跳、足三里、絶骨、八邪等の穴位にはり治療を行うとこれ等は全て病人の筋電図を上昇させることができた。 (p<0.05)
それははり治療後5分から始まり30分間持続した。百会、正営、懸顱をはり治療したものでは正常人の筋電図を上昇させることができた。 (p<0.05)それははり治療後15分から始まり35分間持続した。また電気バリの場合は脳血栓の患者の治療に応用したものがありこれ等も又筋電図のパルスの幅を上昇させた。一般的には鍼の後5分間でその効果は現れるものである。あるものは神経筋刺激機の反応する刺激部分を筋肉運動を引き起こす刺激源として用い足三里付近に相当する部位を刺激し足背を規則的に運動させた。同側の第一指の関節の背側においてマレータンブールによりその運動を記録した。ここで脳血管障害の後遺症のある病人の胃経の梁丘、足三里、下巨虚、解谿穴をはり治療したとき患側健側のパルス幅は全て上昇した。特に患側はこれが顕著であった。また胆経の環跳、風市、陽陵泉、懸鐘をはり治療したとき患側健側のパルス幅は明らかに下降した。三焦経の外関、天井、肩髎、翳風をはり治療したときにもそれは比較的上昇傾向に偏っていた。大腸経の合谷、曲池、肩髃、禾髎をはり治療したとき、患側と健側のパルス幅の上昇と下降は基本的に同じであった。 国外においてもあるものは消化器系、循環器系、内分泌系、等の疾病のある患者の足三里、合谷、少海等の穴位にはり治療を行った後、大多数の病人の還原型アドレナリン様物質は時間的規律をもって上昇し始めた。同時にアドレナリン/色素原の比較値は下降した。これは交感神経の緊張が増加したことを意味するものである。脾兪、太白、行間、陽関等の穴位にはり治療を行ったものではアドレナリン様物質の含有量は低下した。これらは交感-腎上腺系統の機能の低下と更にアセチルコリンの代謝を正常化傾向に向かわさせる作用がある事を意味する。
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